「粉」じゃないのに「歯磨き粉」!?

歯磨き粉 昭和 懐古

時代と共に言葉はどんどん変わっていきます。現代は多くのの言葉が、横文字になったり、略されたり、そしてそれがまたすぐに陳腐化して、新しさ言葉に置き換えられたりしていきます。そしてそのスピードもどんどん早くなっているような気がします。

オフィスでいわゆる「意識高い系」の人達が使う言葉なんてほんとに横文字、略語のオンパレードですね。

そんな中で、なぜか旧態依然の言葉が残っていたりします。

オフィスとか業務の中でよく使われる、「紐付ける」とか「深堀りする」って、言葉。先述の「意識高い系」の人達も、「アライアンス」とか「シナジー」とか「ナレッジ」とか言ってる反面、「紐付け」「深堀り」とかそこはなんとなく古い日本語なんですよね。

他にも前から気になってる言葉に、幼稚園児の「年長組」「年中組」というのがあります。なぜか未だに「年長さん」とか、古めかしい言い方するんですよね。今ならもっとおしゃれな横文字の言い方がありそうなんですがね。

そんな古い言葉の中でも、今なおもっともよく使われ、一般的な言葉と言えば「歯磨き粉」ではないでしょうか。

今ではペーストがふつうですが・・・

未だに粉の、文字通りの「歯磨き粉」を使ってる人はほとんどいないと思います。まだ、細々とは販売されているようですが、使っているのは昔から使っていて、「これじゃないとダメ」、みたいな保守的なお年寄りくらいでしょうか。

現在は主流となってるペーストタイプの他にもジェルタイプ、泡タイプ、リキッドタイプと、バリエーションが豊富ですが、そんな中でも「歯磨き粉」という言葉だけは残っています。

私が小学校低学年くらいの頃、子供はバナナやイチゴの甘ったるい匂いがする「ライオン子供歯磨き」を使っていましたが、父母はサンスターのミント系のフレーバーの「粉」タイプの歯磨き粉を使っていました。

サンスターのは紙箱に入っていて、中に銀色のアルミ箔の袋に、非常に粒子が細かい粉の歯磨きが入っていて、その粉を容器に移しかえ、そこにちょっと水で濡らした歯ブラシを突っ込んで、粉を歯ブラシに付着させて歯を磨くというスタイル。   缶入りの粉歯磨きは、そのままその缶が容器として使えました。

ペーストタイプの歯磨きは昭和30年頃から普及し始めて「粉」を逆転し、おそらく昭和40年代後半にはペーストタイプが主流になっていたと思います。「粉」の歯磨きに対して、これらは「練り歯磨」と言われてましたが、この「練り歯磨き」という言葉はあまり普及してませんよね。この言い方、かえって古くさい感じがします。

しかし、同じ容器に入っている「粉」に家族みんなが、歯ブラシを突っ込っこむって、、昔は常識だったんでしょうが、今考えるとかなり不衛生ですよね。  きっと色々な病気の感染源になっていたのではないでしょうか。歯周病なんてあっという間に広がりそうです。怖い・・・

「歯磨き粉」以外の言いやすい言葉が見つからない?!

そんな、不衛生な時代から現在はオーラルケアの意識も高まり、色々な用途別の薬用歯磨きが発売されています。予防の為に歯医者に行くというのもふつうになってきました。

「歯磨き粉」の時代からは隔世の感がありますが、そんな現代まで、「歯磨き粉」という言葉は残りました。口語では単に歯磨き用の薬剤を「歯磨き」という言い方をするのが一般的ですが、子供の学校からもらうプリントなんかには持ち物として、「歯磨き粉」なんて表記がみられます。

単に「歯磨き」ということも多いですが、この言い方も少しおかしいですよね。「歯磨き」という行為を表す言葉が、歯を磨くために使用する薬剤を指しているわけです。

「歯磨き粉」という言葉が残ったのは、他に言いやすい言葉が見つからなかったからだと思います。「練り歯磨き」はかえって古くさいですし、「トゥースペースト」って言いにくい。横文字でもっと言いやすい言葉があったら、とっくに置き換わっていたでしょうね。

「単車」が「オートバイ」、「バイク」になったように、「白墨」が「チョーク」になったみたいに、言いやすい言葉が見つからなかったということだと思います。

将来、「歯磨き」「歯磨き粉」に代わる新しい言い方はこれから出てくるのでしょうか?  

ネイティブ